:: きづいてないでしょう? ::
「あ、ごめん。先に浴びちゃった」
「いや、別にいいけど……」
 寮の自室の風呂のドアを開けたら、腰にタオルを巻いただけの寿也と目が合った。もう一枚のタオルで髪の毛にまとわりついた水滴を拭いていて、たった今あがってきたのだと容易に想像できる。あまり焼けていない上半身にもいくつか残っていて、思わずちゃんと拭けよと言ってしまった。妙なところで寿也は子供なのだ。
 けど、こいつ白いな。ほんとに外で野球してんのかよ。
 確かに腕は焼けてはいるものの、吾郎を始めとした他の野球部メンバーとは肌の色が格段に違う。昔から色白だったのは覚えているが、今もそれは変わらないらしい。
「吾郎君?突っ立ってないで、入れば?」
 そんなことを思っていたら、不意に寿也の顔が覗き込むように近づいてきた。それと同時にばくんと心臓が狭い風呂場に響くような大きな音を立てて、動きが加速していく。なぜだか寿也を見ていられなくなって、目を逸らして適当な生返事をした。
「どうしたの?」
「別に何でもねえって!ほら、ここじゃ狭いから外行けよ」
「……吾郎君、大丈夫?なんか変だけど。顔赤いし」
「赤いのはおまえのほうだろ」
「僕は風呂あがりだから仕方ないじゃないか」
 いやいやいや。その顔で見られるとやばい……って、何が。
 とりあえずらちが明かないと首を傾げながら出て行く寿也を見送りながら、未だうるさい心臓部のシャツをぎゅっと握る。わけが分からなくて混乱しそうだった。目を瞑って浮かぶのは、寿也の濡れた髪と赤い頬、はだかの上半身。
「変態かよ、俺は……」
 途方もない呟きは、冷たいシャワーの音にかき消されたが、吾郎の頭の中にはしっかりと焼きつくことになった。

  恋しちゃったんだ たぶん 気づいてないでしょう?


*
YUIのCHE.R.RYから。この歌洗脳されますね。でも大好きです。

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